わかる!くわしい!高齢者の整形外科疾患
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脊椎靱帯骨化症とは?

上下の脊椎をぐらぐらしないように安定化させるために、脊椎には、椎間板、椎間関節のほかに、強い線維でできた靱帯という組織があります。
その靱帯には、前縦靱帯(ぜんじゅうじんたい)、後縦靱帯(こうじゅうじんたい)、黄色靱帯(おうしょくじんたい)、棘間靱帯(きょっかんじんたい)、棘上靱帯(きょくじょうじんたい)などがあります。
これらの靭帯は本来柔らかいはずなのですが、加齢や脊椎変形や他の原因によって、徐々に厚みを増して骨に変わる状態(骨化といいます)を脊柱靱帯骨化症と総称します。
脊椎の靱帯のうち、脊髄の通り道である脊柱管内の靭帯である後縦靭帯や黄色靭帯が骨化すると、脊髄を直接圧迫してしまいます。それぞれが骨化した場合の病名が、後縦靱帯骨化症( OPLL: ossification of posterior longitudinal ligaments)と黄色靱帯骨化症( OYL: ossification of yellow ligaments)です。OPLLは、主に頸椎、次に胸椎に見られ、OYLは、胸椎に多く見られます。OPLLとOYLが合併する事も多く、注意が必要です。


OPLLの原因は何でしょうか?


OPLLは、家族内での発生率が多いこと、発生頻度に人種差があることなどから遺伝的背景が関係していると言われています。
またOPLL患者の約半数が糖尿病を合併している事実から、糖尿病との関係も重要視されています。また、女性ホルモン高値、カルシウム代謝異常なども指摘されており、これら多因子の組み合わせによって起こると推定されています。


OPLLの発生頻度は、どのくらいであると言われていますか?

ある統計によれば、日本人成人の約1.6%にみられ、2:1の頻度で男性に多いと言われています。(胸椎OYLは、女性の方に頻度が高いと言われています。)


OPLLの症状は、どのような症状ですか?

主な症状は頸髄症と同じで、脊髄の圧迫による症状、つまり四肢、体幹のしびれ感や痛みなどの感覚障害、力が入らないといった筋力低下を伴う運動障害、尿が出しづらい、または逆に我慢できないといった膀胱直腸障害などです。
こういった症状は、非常にゆっくりと経過することが多く、何の症状もなくいきなり発症するときには、転倒などの外傷がきっかけになることが多いようです。


OPLLの治療は、どのようにしますか?

頸椎OPLLの治療は、頸髄症の項でお話しした治療方法と同じで、脊柱管の狭窄がある状態で首を動かすことにより症状が増悪するために、動かしすぎないことが保存療法の中心となります。
そのために頸椎カラーをつけたり、日常生活でうがい、洗濯物を高いところに干す動作、振動の多い仕事や転倒の危険のあるスポーツ、コンピューターの入力などを制限するように指導したりします。

後縦靭帯骨化症の手術療法では、前方からの手術と、または後方からの手術があります。
前方進入法では、首の前の皮膚を切開して筋肉を分けて、頚椎の前方部分に達して骨を削り、骨化靱帯を切除または遊離させ脊髄の圧迫をとります。後方進入法では、首の後ろの皮膚を切開して筋肉を分けて、頚椎の後方部分を削り、脊髄の通り道を拡大する方法があります。前方進入方法は、骨化した靱帯を切除するので本質的な治療法ですが、手術部位の複数の頚椎を骨移植により固定するため、安静期間が長くなることが多く、また、移植骨がずれてしまう可能性もあります。
その意味で、安全度から言えば、後方進入法の方が良いと言えますが、後縦靭帯を削り取る手術ではないので、大きな後縦靭帯骨化がある場合は効果に限界があります。
後方進入法に関しては、ただ、椎弓を削り取ってしまう椎弓切除術に比べて、椎弓を観音開きにして広げる脊柱管拡大術が術後のOPLL進展するリスクを減らす利点があると言われています。
黄色靭帯骨化症では、この靭帯が脊髄の後にあるため、後方進入法での手術となります。


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